専門医のコラムDr's Column

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2016

緑内障手術、視野が狭くなるのを防ぐ「線維柱帯切除術」の効果は?

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今回は緑内障シリーズの”シメ”として、保険診療で一般的に眼圧下降治療の最終手段である『手術』についてお伝えします。手術による治療が緑内障による視野障害をどのくらい防げるかの医学研究です。

線維柱帯切除術による治療

線維柱帯切除術は眼圧を下げる手術のひとつで、眼圧を下げて緑内障の進行を抑制する目的の治療です。

今回の研究では、線維柱帯切除術を行った64人の緑内障患者が対象にされました。比較のため、手術を行わなかった緑内障患者65人の視野障害の経過もあわせて調査されました。この2群を比較する形で治療成績が統計解析されました。

線維柱帯切除術は視野障害を遅らせる

手術後平均5.4年の経過をまとめたところ、次の結果が得られました。

 

視野の全ての平均変化率が手術前の-2.5±9.3%/年から、手術後で-0.10±13.1%まで遅くなった(P<0.001)。[…]。線維柱帯切除術を受けたグループと比較グループの間に有意差が見られた(P<0.0001、カイニ乗検定)。

線維柱帯切除手術前に比べて、手術後では、視野障害の進行が遅くなったという結果です。手術をしなかったグループに比べると、手術を行ったグループのほうが良好な結果でした。

線維柱帯切除術が長期的に視野障害を遅くする効果が認められました。緑内障の治療には、薬を使って眼圧を下げる方法、レーザー手術、また違う方法の手術などがあります。

当院でも眼圧が高くて薬をいくら使っても下がらない方には積極的に眼圧を下げる線維柱帯切除術をはじめとした手術を行っております。眼圧下降手術においても緑内障の専門医として多くの治療を手がけてきましので、お悩みの方はお気軽に治療についてご相談下さい。

しかしながら日本人の緑内障の7〜8割が正常眼圧緑内障です。もともと眼圧が10~12mmHg ですと、薬でも手術でもこれ以上眼圧を下げられない方も多いのです。これは緑内障で起こっている視神経萎縮(私は “視神経が枯れる” を患者さんに説明することもあります)の原因が、眼圧の高さではなく、視神経の代謝異常であることを示していると考えます。代謝とは、古い細胞を新しく入れ替えていくことで、皮膚が毎日、垢(あか)を出して入れ替わっていることが代謝の一つです。

ですから眼圧の高い方には手術治療が有効であっても、眼圧がすでに低い方には眼圧下降治療は治療効果が期待できず、むしろ薬や手術の合併症の危険に注意が必要となります。眼圧の低い方には視神経の代謝能力が落ちている原因を発見して代謝を高める方法が必要であり、その対応を行っているのが当院のアレルギー科での全身的対応なのです。

◆参照文献

Trabeculectomy Can Improve Long-Term Visual Function in Glaucoma.

Ophthalmology. 2016 Jan.

[PMID: 26602970 ]

当コラムは患者さんのお役に立てていただく参考資料として配信しております。

質問やご意見については診察時に小栗にお尋ねいただけますと幸いです。

電話でのお問い合わせは対応しかねますのでご理解のほど宜しくお願い致します。